
彦根に住んでいると、愛荘町は生活の隣にあるような距離感で、ふらっと行けば、すぐ町のリズムが伝わってくる。
愛知川駅のまわりは生活感が濃くて、秦荘のあたりは時間がゆったり流れてる。国道307号を車で走っていても、外とつながる町だなと感じる。
ただ、どれだけ町が整って見えても、人口が減っていく時代の中では、「安心感」だけじゃ心もとない。
窓口、水道、消防、ごみ、図書館、移動手段。どれも、一つ欠ければ暮らしが傾く。
だから、こんな問いが浮かんでくる。
人口が減る中で、愛荘町の行政サービスはどう工夫され、どう保たれているのか?
私は「正解」じゃなくて、「納得できる仮説」を探したい。原因と結果のあいだにある小さな工夫を、ひとつずつ拾いながら見ていくことにする。
人口減少でまず影響を受けるのは「固定費」だと思っている
「人口が減ると税収が減る」──これ自体は当たり前。けれど、個人的にもっと気になるのは、「減らない支出」のほうだ。
たとえば、
- 窓口を開けるには、人が必要。来庁者が半分になっても、係員は半分では済まない。
- 水道管も道路も、距離は変わらない。人口とは別の話。
- 消防や救急は、人が少なくても、出動回数がゼロになるわけじゃない。
つまり「使う人が減っているのに、支えるコストはほとんど変わらない」
これが人口減少の怖さ。
このズレを、どうやって埋めているのか。それが知りたい。
愛荘町の行政サービスを支える三つの工夫
愛荘町を見ていて「これは意図があるな」と思える仕掛けがいくつかある。
私なりに整理すると、次の三つに集約できる。
- 施設や機能を組み合わせて、一つのコストから複数の価値を出す
- 町単独ではなく、広域や外部委託にサービスを委ねる
- 使われるときだけ動くしくみをつくる(交通に顕著)
それぞれ掘り下げてみる。
図書館と観光施設を組み合わせて、使う理由を増やす工夫
愛知川駅のすぐ近くにある「愛知川図書館」と「びんてまりの館」は同じ建物にある。
これは、学びと観光を一か所に集約することで、「行く理由」を掛け合わせている例だと思う。
本を借りに行ったついでに展示を見る。
観光で寄った人が図書館をのぞく。
「ついで」が重なると、施設は残りやすくなる。
使われていない施設ほど、次に削られやすいから。
秦荘図書館がまだあるのも、単なる統廃合ではない考え方だと思う。
愛知川と秦荘で地理的に離れている町だからこそ、利用者にとって「遠い」が「行かない」にならないようにしているのかもしれない。
ハーティーセンター秦荘も同じで、静かな日はあっていい。でも、イベントなどで人の動きがある仕組みがあれば、「残す意味」が見えてくる。私はそう思う。
重いサービスは広域で支える水道・消防・ごみ処理の外部依存
人口が減る中で、水道や消防、ごみ処理のようなインフラは、町だけで抱え続けるのが難しくなる。
たとえば、
- 水道の漏水対応や施設更新には、技術者と予算が必要。
- 消防車両の更新や指令系統も、単独で整備するには重すぎる。
- ごみ処理施設の老朽化は、町単位では手に負えない。
愛荘町は、こうした領域を「広域の仕組み」に委ねている。
住民の目には見えにくいけど、裏でしっかり支えている器があるから、水も出るし、ごみも回るし、火事の時も来てくれる。
サービスを維持するとは、「町の外に頼る設計ができていること」なのかもしれない。
愛荘町の交通支援に見る「必要なときだけ動かす仕組み」
人口減少で最初に弱るのが交通だと思う。
バスに乗る人が減ると、運行本数が削られ、さらに利用者が減るという悪循環が起きる。
愛荘町では、予約型の乗合タクシーを導入している。
これは「毎時毎便走らせる」のではなく、「予約があったときだけ動かす」方式。
効率はいいし、無駄もない。
たとえば、
- 平和堂愛知川店
- フレンドマート秦荘店
- 町役場や医療機関
- 彦根市・東近江市への通院や手続き
こうした「目的地がはっきりしている町」では、必要なタイミングで動く交通の仕組みと相性がいい。
移動手段があれば、福祉も医療も自立できる。でも、移動が断たれると、他の行政サービスも使えなくなる。だから、ここは見落とせない。
周辺自治体と比べて見える愛荘町の位置的な強み
愛荘町の周りには、彦根市、東近江市、豊郷町、甲良町、多賀町といった自治体がある。
この中で、愛荘町が持つ強みは「近接する都市へのアクセスがいい」ことだと思う。
都市機能に寄りかかりながら、町の生活の芯は残す。これは人口減少期の生き残り方のひとつ。
さらに、
- 国道307号が町を通っていて移動がしやすい
- 湖東三山スマートICが近くにある
これも重要。物流や通勤、救急など「町の外とつながる線」が太いと、内部にすべてを抱えなくてもいい。
観光でも同じことが言える。金剛輪寺があることで、湖東三山の流れに乗って人が来る。
人の流れがあれば、道路も施設も、説明しやすくなる。維持の正当性が持てる。
飛騨市・益子町・勝山市と比較して見える、愛荘町の条件の違い
愛荘町の人口規模は約2万人前後。
これは、岐阜県飛騨市、栃木県益子町、福井県勝山市とだいたい同じくらい。(全国市町村人口ランキング)
でも、条件はまったく違う。
飛騨市は、広い面積に集落が点在していて、除雪や道路維持、移動支援の負担が大きい。
愛荘町は、町の広さがコンパクトで、サービスの線が短くて済む。これが維持しやすさにつながっている。
益子町は、益子焼という観光と産業の核がある。(益子町の人口推移)
イベントや観光対応が必要な反面、外からの収入で町を支える構造になっている。
愛荘町はそこまで観光推しではなく、暮らしの使いやすさで支えている印象が強い。
勝山市は、雪の多さと観光の季節変動がある。
冬の除雪やインフラ維持の負担が重く、観光ピークと閑散期で必要なサービス量が大きく変わる。
愛荘町は雪の心配が少なく、年間を通じて安定して運用できる環境がある。
条件が違えば、行政サービスの組み立て方も違って当然。
同じ人口でも、町の立ち位置で、やるべき工夫が変わってくる。
今のところの答えと、これからの心配
ここまで見てきた中で、今の私の仮説はこうなる。
愛荘町は、
- 施設は意味を重ねて使う理由を増やし
- インフラは広域に乗せて支えを得て
- 交通は必要な時だけ動かす方式に切り替えて
人口減少の中でも、サービスがいきなり崩れないように設計している。
さらに、周辺都市との距離が近く、道路も整っているから、外部機能との接続もしやすい。
これが、町を支えている目に見えない力だと思っている。
ただ、不安がないわけじゃない。
人手不足と施設の老朽化。この二つが一緒に進むと、今の仕組みでは足りなくなるかもしれない。
交通も、仕組みはあっても運転する人がいなければ成立しない。
古くなった施設を直すには、お金と人の両方が要る。
それでも私は、愛荘町の強さは「点が多いこと」だと感じている。
愛知川駅
平和堂愛知川店
フレンドマート秦荘店
図書館、文化施設、金剛輪寺
国道やスマートIC
点が多ければ、線が引ける。線が引ければ、サービスがつながる。つながれば、維持の工夫が利いてくる。
だから私は、愛荘町はまだ崩れないと思っている。
言い切るつもりはない。でも、今はそう感じている。